2月6日(カラオケの話)
昨日は本社から人が来たので飲み会がありました。
午後9時過ぎに一次会が終わり「では私はこれ*1がこれ*2なのでドロンさせていただきます」と言って退散しようとしたら、酔った上司に「馬鹿者お前は強制参加だ」と肩を掴まれそのまま二次会のカラオケ店に引き摺り込まれました。もっと飲ませて酔い潰すべきだった。
上司たちの歌に合わせてマラカスを振る機械になっていたらいつの間にか午後10時。パズドラやりたさで上の空になりながらもリズミカルにシャカシャカ振っていると、上司が「こいつ、1,000曲くらい歌えるんよwwwwしかも僕ら世代の曲も得意でwwww」と適当なことを言い出しましてね。本社から来たえらい人(通称本社1)が「ほおーーーーっ」と値踏みするような視線を送ってくるわけです。
「いやいやシャカシャカ冗談よしてくださいよシャカシャカ」と言いなんとか逃れようとしていたら、BOOWYの『NO NEW YORK』を熱唱してたはずの本社から来たえらい人の部下(通称本社2)が「じゃあなんか歌ってもらっちゃおうかな」とデンモクでピコピコやりだして、画面に表示されたのが
君のひとみは10000ボルト① / 堀内孝雄 (1978) 2014-6-12 HD - YouTube
いや、おかしいでしょ。
別に堀内孝雄が悪いとかそういうことじゃなくて、でもなんかもっとこう……そう、堀内孝雄に辿り着く前にツークッションくらいあるでしょ。アリスとか、谷村新司とか。
アリスなら『チャンピオン』、谷村新司なら『昴』とか『陽はまた昇る』などなど、私の世代でも一度や二度は耳にしたことがある名曲が色々あるんですよ。
それらをすり抜けて堀内孝雄。君のひとみは10000ボルト。ピカチュウより弱い。
この歌が世に出たのが1978年、私が世に出たのが1985年。なんで父親の金玉の中にすらいなかった頃の歌を歌わなきゃいけないんだと思ったんですけど。
歌えるんですよね。幸か不幸か。
高校の頃、青春歌年鑑という昔のヒットソングを集めたCDにハマりましてね、そこにいたんですよ。堀内孝雄が。君のひとみは10000ボルトが。
多分本社2はね、戸惑う私を見て笑いたかったんだと思う。私も「え、え?」って慌てる姿を見せるべきなんじゃないかって考えがよぎった。
でも私は……いや、私の中の堀内孝雄はそれを許さなかったんですよ。
「歌え」と。「こいつらの度肝を抜いてやれ」と。脳内の孝雄がそっと囁いた。
「鳶色のひとみに 誘惑のかげり」
私が朗々と歌い出した瞬間の本社2の顔ったらなかった。眼鏡キャラだったら絶対に眼鏡がずり落ちてた。「ば、バカな! 僕の完璧な計算が!」とか言ってた。
「金木犀の 咲く道を」
十年以上聞いていない歌にもかかわらず、歌詞が完璧に頭に浮かぶ。
きっとこの時、孝雄と私は一心同体になっていた。
「銀色の翼の馬で 駆けてくる」
本社1は理解できないものを見るような眼差しを私に向けつつ、のどごし生を飲んでいた。
「二十世紀の ジャンヌ・ダークよ」
上司はゲラゲラ笑ってた。
「君のひとみは10000ボルト」
「地上に降りた最後の天使」
「君のひとみは10000ボルト」
「地上に降りた最後の――」
「――天使」
「サンキュー!」